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【藤子・F・不二雄】SF短編漫画「ポストの中の明日」から得た教訓【ネタバレ無し】

藤子・F・不二雄 

SF短編コンプリート・ワークス7

「ポストの中の明日」の一作目、「ポストの中の明日」について紹介します

 

★ネタバレなし★

 

 

 


このお話はひょんなことから未来の(明日の)新聞が読めるようになった市川を主人公にした SF短編だ。


これから起こる事件や事故を未然に防ごうと躍起になる市川だが誰からも信用されない。


市川とその友人たちはハイキングの計画を立てていたのだが、明日の新聞には自分たちが遭難すると書いてあり、中止しようと友人たちを説得するがやはりうまく行かない。


そのまま市川も友人たちもハイキングに行ってしまうのだ。


そんな彼らの運命やいかに…?!
ハラハラしながら読めて面白かった!


この漫画の構成は危険なハイキングの様子と市川の回想が交互に展開されていくので、2つの軸で最後まで読者を引っ張っていく。
35ページがあっという間だった。


登場人物の中で一番印象的だったのが、市川のおじさん。

 

SF漫画を描いていてちょっと変わり者なおじさんは、市川の唯一の理解者であると思いきや、案外、現実と空想の区別がついていてネジのぶっ飛んでいない大人だったので、市川と一緒にこちらもがっかりした。


しかし、あの変わり者のおじさんでさえ市川の話を信じない、という描写があるからこそ、市川の葛藤やどん詰まり感がひしひしと伝わってくるのかもしれない。


このお話はそんな市川に感情移入しながら読むとさらに臨場感が生まれると思う。

 

最後に、もし自分が明日の新聞を読めてしまったら…

 

やはり市川のように無力感や罪悪感、焦燥感でいっぱいになるだろうな。知らぬが仏で焚き火の燃料にしちゃうかも。

 

そんな能力を持ってることが知られたら、なにかの組織から命狙われる危険だってある。

 

不確かな未来があること、それは生命全てに与えられた平等なリスクであり、かえって幸せなことでもあるのかもしれない。

 


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他にも藤子・F・不二雄のSF短編について感想を書いていきます。ぜひ読んでみてね。

【あだち充】「みゆき」王道の青春ラブコメ!【感想】【ネタバレ無し】

美人な同級生の鹿島みゆきと、美少女で1つ年下の義理の妹である若松みゆき、二人のみゆきの間で心揺れる主人公、若松真人。それと彼らを取り巻く登場人物たち(というかだいたいWみゆきに群がる男たち)が織りなす青春ラブコメの王道的漫画だった。

 

あだち充節炸裂で時代も感じるが今読んでもめちゃくちゃ面白い。

素直な感想として、美少女たちになぜか好かれる主人公が羨ましい。

親の過干渉もなく楽しい男友達もいて青春を謳歌するには十分な要素が揃っている。

 

義妹・みゆきとの出会いは海。鹿島ちゃんにフラれたばかりの真人は妹と知らずにその美少女に恋をしてしまう。妹は6年間も父親と海外で暮らしていて突然帰ってきたため、その変貌ぶりに妹とは気が付かなかった真人君。

 

鹿島ちゃん脈ありだったのにバカなことでフラれてもったいないことしたっていう矢先に妹に出会ってなぜか速攻で好意を持たれるというテンポの良さ。

 

主人公がちゃんとスケベで下心があり健全で、だんだんかわいく見えてくる。

個人的にはスカしてるラブコメの主人公より好きかもしれない。

 

それに真人はちゃんといい奴だ。二人のみゆきがおせちを作った時、比べたくないからと最後まで片方のおせちしか食べなかった。比較してしまうことによる罪悪感を抱きたくなかったのもあると思うけど、それを相手にも悪いなと思ったんだろう。

 

それに妹のみゆきには自分が義理の兄だということを頑なに隠していた。なぜなら妹・みゆきが自分は天涯孤独だと知り悲しむだろうと思ったからだ。

 

そういう優しさや誠実さが普段の冴えなさとのギャップになっていて魅力的な男子だと思う。

 

そういう内面的な良さは容姿だけで判断する一部の年頃の娘たちにはわからないのかもしれない。人を内面的に好きになれるって素敵なことだなと改めて思う。かけがえのない存在だからこそ、別れたりフラれたりしたときの傷も深いかもしれない。だからどちらかの選ばれないみゆきのことを心配に思いながら読み進めた。

 

そういえば作中のハイスペックイケメンたちは咬ませ犬で残念役だった。

これもラブコメの王道パターン。

本当にいい奴もいたけど自分のことしか考えてないような(時には盗撮までする)奴もいた。

この漫画、結構苦情が来そうな非行が多い。

女生徒との結婚を本気で目指しセクハラまでする教師、妻子持ちでありながら援助交際&のぞきまでする警察官、未成年の飲酒など。

こういうところはやっぱり時代なのかな、と。

 

まあみゆきもみゆきでよくホイホイとついていってしまうから思わせぶりなところもあって危ない子なんだよな。

作中だと妹のみゆきの方が鹿島ちゃんよりモテ描写が多かった。妹のみゆきは女子中学校に通ってたんだけど女生徒からも人気があった。やっぱり同性からも人気がある人っていいよね、さっぱりしてて嫌味がない感じの人が多い印象。

 

そしてこういうモテ描写があると主人公がさらに羨ましくなってくる。

みゆきたちがなぜ真人君を好きになったのか、その経緯も知りたくてどんどん読み進めた。ほんとにこの漫画、テンポがいいので読みやすい。

 

読み終わったときはしばらく「みゆき」ロスになった。真人君たちの日常は続くけれど、もうそれを見届けることができないんだっていう残念な気持ちになった。

それくらい、みんなのキャラがたっていて引き込まれたということなんだろう。

 

「みゆき」ワイド版 全5巻