【コナリミサト】短編集「恋する二日酔い」達観した人間観察に脱帽【感想】
コナリミサト先生といえばドラマ化もした「凪のお暇」が有名だけど、短編集もアツかった!
ピンクビールアワーというビールととある女の子たちの話が13話ある短編集。
一話一話に意外性やどんでん返しがあったりして意表を突かれる
現代人のリアルなノリや自尊心とか自衛心なんかを描かせたら右に出る者はいないのでは…?!と思うほど、時々グサッと来たり、かと思えばほっこりしたり共感したり…
感情移入して読むとほんとにジェットコースターに乗ったみたいな感じになる
「凪のお暇」同様に人間模様がコミカルだけどもとにかくリアルなのだ!
コナリミサト先生の人間への観察眼の鋭さには脱帽してしまう
それともう一つの魅力が台詞!
リズミカルで今風で短くても本質を突いていてそのキャラクターの心の底が覗けるような台詞がすばらしい!
コナリミサト先生自身もお酒がお好きとのことだったので、そういう台詞回しはお酒の席から出来上がったのかなと思うくらい、テンポがいいのだ
今回の短編集で自分が一番好きだったのは第一話。
自己主張の激しいかなり攻めたファッションの小林。彼女とは対象的なコンサバな遠藤由麻里。二人の大学生活から物語ははじまる。
飲み会で男子たちからチヤホヤされるおしとやかな由麻里、方や元気いっぱいのピエロに徹する小林。
そんな小林もいつかきっと自分の良さに気が付いてくれる人が現れると心の底で願っていたのだが、
結局、どんなに努力しても周囲から愛されるのは由麻里みたいな女の子なんだって気づいてしまう
就職を境に携帯を叩き割りイメチェンした小林は、由麻里のように没個性でおしとやかな女性に扮することに
するとたちまち周囲の男性からチヤホヤされるのだが、そうやって寄ってくる男たちって中身が薄いと感じ始める
そんな中、シバタという同僚男性とは素の自分のときの趣味が合うことを知り、もっとコイツと話したい…!となる小林
しかし、飲みに誘うもののとてつもなく嫌そうな顔で断られてしまう
ついでに「小林さんっていつもニコニコしてて大変そうだよね」と、どこか見透かされてるようなことまで言われてしまい、
帰りのホームでふと思う
どんなにたくさんの異性からもてはやされたとしても、一番仲良くなりたい人に受け入れてもらえないのなら意味がない、と。
自己嫌悪に陥っていた小林の前に現れたのは、なんと同じく社会人になった由麻里…!
しかもその由麻里の出で立ちに小林もびっくり!!
意気投合した二人はピンクビールアワーで飲み明かす
「うまーっ!!!」久しぶりに素で飲んだお酒のなんておいしいことと小林
結局、人間、素がいちばんかもしれない
自分的にはこの物語はハッピーエンドだったと思う。
コナリミサト先生は「欲」を描くとえげつないくらいグサッとくるキャラクター像を作り上げてくる。
そういう人間の痛い部分を冷静に達観して見ているのだろうなぁと感じるのだ…。
そういうわけで今回はコナリミサトワールドにどっぷりつかれる短編集のご紹介でした
読んでいただきありがとうございました