【浅野いにお作品の魅力】灰色の風景に差し込む陽光
「ソラニン」や「おやすみプンプン」などでもおなじみの漫画家、浅野いにお先生の初短編集「世界の終わりと夜明け前」を読んできた
浅野いにお先生は気怠さとか絶望の中に柔らかな光をあてる唯一無二の漫画家だと思う。
はびこる無関心
がんじがらめにしてくる自意識
灰色にしか映らない世の中
こんなはずじゃなかった人生
もう戻れないあの日の自分
肥大化していく閉塞感に反比例して縮小していく夢や希望
そんな僕たちは本当にもうどうしようもないどん底にいるのか
生きてる意味ってなんなんだろう
どこで何を間違えたのか、それとも初めから決まっていたのか
そういう星の下に生まれなかった、ただそれだけ?
平井堅の「ノンフィクション」という曲の中に「惰性で見てたテレビ消すみたいに 生きることを時々やめたくなる」って歌詞がある
慢性的にアンニュイな絶望感や孤独感を抱えている現代人ってかなり多いと思う
それで浅野いにお先生の作品に出てくる登場人物たちに共感してしまう人が多いのではないか
それでもやっぱり生きることを諦めきれなくて今日も生きている
生きてるとどこかでいいことが訪れる
それがたとえ些細な光だとしても、ある人にとってそれはかけがえのないものだったりする
浅野いにお先生の漫画の中にはそうした優しい一面が見えるときがあってそういうところが大好きだ。
ついこの間までのキラキラした自分が見えなくなった人、
つまらない将来が確約されてるように感じて生きている人、
とくに二十代後半の人にドンピシャで刺さる漫画だと思う。